とってっも愉快な家族経営

Tottoriカニ鍋

仕事柄地方都市への出張が多く、「名産を食すのは楽しみである」 この言い方はかなり控えめな言い方である。  出張計画が決まった途端に、「何を食すか」のメンタルリハーサルが始まり、当日はなにをさておいてもB級グルメ探索の旅に取り掛かる。  

B級グルメと自称してはいるが、お客様とご一緒の時は「お呼ばれ」がもっぱらであるから、超の付くA級グルメになる。

鳥取空港に出迎えてくれた岡山営業所のⅯ君の車に乗り白兎海岸を走ると、紺碧の海があり大きな岩と砕ける白波に出会う、まるでハワイのノースショア―を走っているようだ。

アポイントの時間までかなり余裕があるので、昼食を取ることにした。  

海岸に軒の侘しいうどん屋があり、あまり期待しないで「スタミナうどん」を注文した、

一番値が張るので自慢のうどんかなと思っただけである。

ビックリした「旨い」! スタミナの名がついているのでゴタゴタした肉類が乗っていると思っていたが、野菜たっぷりでスッキリ味、以後しょっちゅう立ち寄った。

お約束の時間になったので、セールスプレゼンを行った。 

社長・専務・常務二名は皆同年代の親族である、私から見れば「おじさん連中」である。

総務担当の常務が「この経営戦略計画を観てください、どう思いますか?」と冊子を差し出してきた。 

「中々きれいな装丁ですね」などとお世辞を言いながら中身を拝見。  

なんとなく気易い雰囲気だったので、思わず気付いたことをそのまま口に出してしまった。

「これは戦略計画書と言うよりは、あるべき姿の理想像ですね、過去数年の実績値の延長線上に望ましいラインを伸ばして描いたものです。 これでは戦略とは言えませんね、外部環境の重要変化も捉えていないし、自社の強みを明確にされてないし・・・・」スッパリ切りコメントした。

驚いたことに全役員は手を叩いて大喜びしている、「そうなのです、何かおかしいと思ってのご相談だったのですが、まさに今言われた通りのことを感じていて皆でこれで良いのだろうかと頭を捻っていたのです、スッキリしました」 

「是非わが社の中期経営計画策定のご指導を頂きたい」トントン拍子に話がまとまり、以後6年間、毎月2~10日間を費やすお手伝いになった。

全役員は概ね職人気質で、戦略検討のようなややこしいことは苦手であり、私の説明時の講義はポカンと聞いている。 

たまに冗談めいた講義をすると大喜びである。  

ある時こんな話をした、サービスマネジメントに関してである。

事例として「銀座の売れるホステス五項目」をご披露した。

広島の飲食チェーン「Hグループ」の役員さんから聞いた話の受け売りである。

売れるホステスの共通項は、決して美人で売れているわけでなく、以下の特徴がある。

 この特徴的行動や特性分析は、大げさに言えば経営科学で言うと「コンピテンシーアプローチ」と言える。  

コンピテンシーとは高業績者の行動特性を明らかにし、行動は真似ることが出来るので行動変革は可能で高業績者を育成出来ると考えた研究で、ハーバートのデビット・マクレランド教授などが中心となり発展したアプローチである。。

売れるホステスの特徴

  •  聞き上手  

話し上手のホステスさんは、最初は楽しいが2~3度で飽きる、相手するお客も疲れる。 

聴き上手は、お客に喋らせる、お客が喋ることは自慢話が多い、自慢話しを得々と話させる、お客は気持ち良い時間を過ごし、また来ようと思う。

② こまめに連絡してくる 

しつこくなく「年賀状」「お歳暮」「開店記念周年祝いパーティー」 等案内はがきなども含めて 

仲間で食事会をしたあとで気の合った仲間と「もう一軒」となる、その時こまめにハガキをよこし、断られてもメゲズに会社に連絡をよこしていると、ツイツイ行かないと悪いなと思い店に寄る。

③ 記憶力が良い  

お客の顔と名前を確り覚えて、お客様の名前を呼んで語りかける。  前回のご来店時に関する話題を持ち出し、その時の服装・ネクタイなどの趣味をさり気なく褒める。  

するとお客は勘違いをする「ひょっとすると俺のことに関心があるのかな」

所詮夜のビジネスは勘違いで成り立っているので、勘違いを演出する。

記憶力は限界があるのでこまめにメモを取っている。

雑談:最近はお客様の情報をデジタルで管理することが多い。 ホステスさんは席に着く前にお客様に関する情報を閲覧して準備する。 すると次から次に席に着いたホステスさんが一様に、前回の青いエルメスのネクタイを誉める。 良し悪しですね。

④ 部下後輩の面倒見が良い  

売れっ子のホステスは一時に複数の顧客と対応しテーブルを掛け持ちする「テーブルポッパー」と呼ばれるが、自分がよその席に行っている時に、お客様が退屈しては申し訳ない。 その時に普段から面倒を観ている下の娘が頑張って席を盛りたてる。

⑤ 別れ上手である  

「別れの美学」と言われるが、帰り際のお客様を確りお見送りして、上機嫌でもう一軒又はご自宅にお帰り頂き、その際にさり気なく次回のお約束を戴く、上機嫌の酔ったお客は次回の来店予定などを喋ってしまう。

高業績のビジネスマンは約束を守る習性があり、酔った勢いで言った約束を守る律義さがある、約束が気がかりで来店する。

この話をした時は大受けであった。  

社長は、今度飲み屋に行ったらお店の娘に是非この話を披露したい。  

聞き流していたのでメモを取らなかった、もう一度喋ってくれとのこと、普段の話をこれくらい熱心に聞いてくれていたら良いのにと、嘆息した次第である。

この会社の経営者がもう一つ熱心なのが、夜の飲み会である、

コンサルの後は必ず飲み会の開催である。  

宿舎が駅前の「ホテルモナーク」。 温泉がある上品なホテルで、鳥取の飲食街に近いとの理由で深夜まで熱心にお付き合い戴いた。

冬になると「かに吉」で松葉ガニ、店主は浜坂漁港モノしか扱わない、自分の生まれ故郷なのだ、相撲取り崩れで中々の料理熱心である。  カニ鍋は、お客には一切触らせないで店主自らが手を下す。  そして一口のウンチクがある。 「カニ刺しでも鍋でもカニを手で触るでしょう、手の匂いを嗅いでご覧なさい、一切匂わないでしょう。 鮮度の良いカニは匂わないのだ」と鼻高々である。 この店は夏場にはそれは美味しい牛肉を食べさせる。 絶品のお店である。

ずいぶんお世話になり楽しいお仕事であったが、反面、忸怩たる思いのある仕事であった。  

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